「美しき水車屋の娘」より
id:esper様のサイトで取り上げられていた、シューベルトの歌曲集の中の一曲がとっても印象的だったので、ちょっと取り上げてみようと思う。秀逸な例示をネット上に公開下さり、発想を喚起して下さったid:esper様に感謝です。
聴いたことはあるはずだけど、全く思い出せない「小川とおっさん」なる曲が、美しいメロディだそうなんだが、取り出されたコードだけ見ても(見ただけかよ!)、もう全然印象的である。
Em | F/A | B | Em |
Em -> ? -> B(7) -> Emと、トニック -> ? -> ドミナント -> トニックという基本構造が見えてくる。こりゃモチロン世の中あちこちに見られるもので、esper様や僕、そして皆さんが気になるグッとくる部分てのは、当然ふたつめのコード"F/A"になるわけであろう。 さて、ここでesper様の見解が一般的なんだと思う。つまりF/Aをナポリの6、bIIコードの第一転回型と思う立場だ。「bIIならサブドミマイナー」みたいに、脊髄で反射してしまうジャズ屋も多いかもしれない(裏とかいうやつも間違いなくいるな)。 ところがここでは、想定する軸足はマイナーキーである。ペンタトニックの筒的でなくとも、
E -> F -> Eという進行の和声の変化の仕方(->の部分ね)と、
Em -> F -> Emという進行の和声の変化の仕方がえらく違う、つまり同じフレージングやリハモが機能しないことは、いうまでもない。だとすれば、先の反射はチト早合点となってしまう場合も多いのではないか。 至極あたりまえのことなのだが、メジャーのトニックとマイナーのトニックとは、同じ「トニック」でも本質的に違うというのが、ペンタトニックの筒の立ちたい地平なのである。(つづく)