日本唱歌集
年をとっているのか、年々、文部省唱歌のような素朴さが好きになる話を友人としながら、とはいえあまり知らないなと、この岩波文庫を買ってみました。
- 作者: 堀内敬三,井上武士
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1958/12/20
- メディア: 文庫
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明治十四年(一八八一年)十一月、文部省音楽取調掛編集の『小学唱歌集』出版を起点とし、昭和二十年(一九四五年)八月の戦争終結に至る六十五年間に、官・民諸方面から発表された数多くの唱歌の中から、注目すべき作品百五十余篇を選抄して、『日本唱歌集』一巻としました。
いまひとつ時代背景はわからないものの、すてきな歌がたくさん入っていて、とても嬉しい。巻末の詳細な解説と参考文献リストが、また素晴らしい。
洋楽が全く日本で鑑賞されていなかった明治初期に、洋楽のリズムや音階を日本国民に普及させたのは「唱歌」であった。唱歌は、日本人が洋楽にとりついて行く大きなつかみどころとなった。しかし無伴奏・単音の形で普及した唱歌は、和声を普及させる力がなく、小歌曲のみに限られた唱歌は、洋楽の大きい複雑な形式を理解させるよすがにはならなかった。このことが日本に本格的な洋楽ふうの作曲技巧を移植することを遅らせているが、それにしてもこの大きな人口をもつ孤立した一民族が、他民族の生んだリズムや音階に一挙にして親しみをもつようになったのは唱歌の功績である。そうして、「唱歌」を生みだした明治教育の功績である。
どうだろう、きっと僕がいま唱歌を好む理由は、和声からも形式からも自由だって側面も。そしてこのことは、僕らの音楽の未来にとっても、悪くない気だってしてきます。