任意の「純正調」
田中正平の純正調オルガンを見て*1きました。「日本近代音楽の150年」という展示のテーマは、必然的に文脈のようなものを想起させて感慨深く、また複雑な鍵盤とレバーから成るインターフェイスは、その戦前につくられた実物を目の当たりにすると、なんとも言えない迫力がありました。素晴らしかった。
実際に練習してみたい衝動に駆られる一方で、しかし一部の鍵盤を分割したり、新たに追加することで、任意の「純正調」を表現することは、あまり簡単でないようにも思われました。12平均律がそうであるように、オクターブのどこから見ても対称であることを要求すれば、結局のところ、例えば53平均律*2を使いこなすアクションに帰着するはずです。
振り返ってみると、こうして徒然を書き始めてからも既に10年が経ち、しかし12平均律にさえ、いまだに届かない奥行きを感じているわけです。先に続く現代の部屋に展示された、まるでアートのような楽譜を、そんなふうに眺めた後、凍らない雨の中を帰途につきました。